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社会福祉法(地域共生社会の実現)

ソーシャルワーカーバッチ

このページの目次になります。


■ 2017年の社会福祉法改正の経緯

社会福祉法は、1951年、昭和26年に制定された社会福祉事業法が改正、改称された法律になります。
社会福祉法は、2016年、2017年、2018年、2020年というように何度か改正されていますが、今回は大きな改正を見ていきます。
地域福祉の観点からのもので、2017年、平成29年6月の社会福祉法改正があり、2018年、平成30年から施行されているもの、それから、2020年、令和2年にも社会福祉法の大きな改正がなされています。これらの点を重点的に確認しておきます。
なお、2016年改正は、社会福祉法人制度の改革をしたわけですが、これについては、社会福祉法人に対し、地域における公益的な取組を実施する責務を規定し、社会福祉事業及び公益事業を行うに当たり、無料又は低額な料金で福祉サービスを提供することを努めなければならないと規定しています(社会福祉法第24条第2項)。このあたりは、福祉サービスの組織と経営の科目で確認をしておいてください。

1.新たなニーズ

日本の少子高齢化や核家族化の進行、人口減少、雇用のあり方の変化(終身雇用制度の揺らぎ、非正規雇用の拡大など)、地域のつながりの希薄化など、地域社会を取り巻く環境の変化により、国民の抱える福祉ニーズが多様化・複雑化しています。
特に雇用のあり方の変化によって、働き始めることが難しかったり、安定した収入の見通しが持てないことの結果として、家庭を持てない若者の増加、ひきこもりの増加、これによって少子化の加速を招いています。最近、明らかになってきたこととして、当初、支える側と考えていた現役世代が変化してきていて、支えるのではなく、支えを必要としている若い人たちが増加しています。また、8050問題を見てください。80歳の親が50歳の子どもを支えるという、立場の逆転現象が起こっています。
しかし、これらの課題を既存の高齢者、障がい者、子どもといった各分野ごとの縦割りの制度で解決していくことが困難なケースが浮き彫りになってきています。そして、これらのケースは、家族や家庭の問題として放置されてきたのが現実です。また、こうした困難を抱えた世帯は、地域住民からすると、いなくなって欲しいといった「排除」の対象にすらなる場合もあります。では、このような世帯を排除する社会が、住みやすい社会なのか? そう、決してそうではないですよね。
そこで、このような状況を改善していく必要があったわけです。
2017年の社会福祉法改正に至るまでに、国による数々の報告書等が出され、改善のための提言がなされています。これは、イギリスのコミュニティケア改革の際に報告書とそれに基づく法律がセットであったのと同じように考えてもらえばよいと思います。
そこで、日本の地域福祉に関する主な報告書に触れておきますが、これらの報告書の大きな軸は、困難を抱えた世帯を排除するのではなく、支援し共に解決していくという地域共生社会を目指していくというものになります。
それでは、日本の地域共生社会の実現に向けた政策動向を確認していきます。

2.「これからの地域福祉の在り方に関する研究会」の報告書


まずは、厚生労働省による、2008年、平成20年3月に公表された「これからの地域福祉の在り方に関する研究会」の報告書があります。この報告書の副題は、「地域における『新たな支え合い』を求めて 住民と行政の協議による新しい福祉」です。
厚生労働省がこの報告書を出した、いや出さざるを得なかったのは、行政だけがいくら頑張っても、地域社会を取り巻く環境の変化から出てくる多様化・複雑化した福祉ニーズには到底応えられないということを、漸く厚生労働省も自覚したからです。そして、この厚生労働省の自覚が、その後の国の政策に大きな転換点をもたらすことになります。
では、「これからの地域福祉の在り方に関する研究会」の報告書では、どのようなことが提起されたのか。
厚生労働省が作ったこの図(住民と行政の協働による新しい福祉)を見てください。


住民と行政の協働による新しい福祉


この「これからの地域福祉の在り方に関する研究会」の報告書では、多様な生活課題に対して、基本的な福祉ニーズは「公的な福祉サービス」で対応する、という原則を踏まえつつ、地域における多様なニーズへの的確な対応を図る上で、成熟した社会における自立した個人が、主体的に関わり、支え合う、「新たな支え合い」、つまり、「地域の共助」の領域の拡大や強化が求められています。これは、住民と行政の協働による新しい福祉の創造になります。

そして、この共助を確立するための推進・整備方策として、地域における見えずらい生活課題の発見ができる方策として、住民と行政との情報共有、住民の地域福祉活動の拠点(集会所、空き店舗等)、地域福祉のコーディネーター(住民の地域福祉活動を支援するため、市町村が一定の圏域に整備する人材 CSW コミュニティーソーシャルワーカー)、活動資金の必要性を提言しています。ここで、コミュニティーソーシャルワーカーについても言及されていることがポイントとなります。
また、生活課題は従来の福祉の枠を大きく超えるものであり、防犯や防災、教育、まちづくりなど幅広い分野との連携(横ぐし)が必要であると言っています。
では、地域福祉活動は、どのような圏域を単位として行われるのがよいのか。
この点は、地域福祉活動は、身近でなければ早期発見しにくい課題などを対象とするため、課題が見えるような、小さな圏域を単位として行われるんだとしています。
この図(重層的な圏域設定のイメージ)を見てください。


重層的な圏域設定


私たちは、気軽に、地域、地域と言いますけれども、では地域とはどの範囲のことを指すのか、どの範囲でどんな取り組みをすることが適切なのか、そのようなことをこの図が示しています。
1層から5層までの重層的な圏域が図で示されていますが、地域福祉活動の際の小さな圏域については、それぞれの地域により多様な設定があり得るとされています。

1層は、自治会・町内会の組・班の圏域、2層は、自治会・町内会の圏域、3層は、学区・校区の圏域、4層は、市町村の支所の圏域、5層は、市町村全域になります。

「これからの地域福祉の在り方に関する研究会報告書」では、重層的な福祉圏域の設定が大事だと言っています。
この報告書では、共助の拡大や強化が求められているわけですが、そのためには、地域における見えずらい生活課題発見のために、身近な住民同士が発見できる方策の必要性、また、地域福祉は従来の福祉の枠を大きく超えるものであり、防犯や防災、教育や文化、住宅やまち作りなど幅広い分野との連携が必要であるとしています。そして、身近な圏域で発見された地域の生活課題がより広い圏域で共有され、対応の検討を通して新たな活動の開発に繋がるものとして、顔の見える関係、そうなれるような環境作りの必要性をこの報告書では訴えています。実際の研究会の中では、住民の地域福祉活動が活発に行われている地域を見ると、その市町村の中で重層的な圏域を設定していることを明らかにしていますつまり、身近な顔の見える関係の圏域で発見された地域の生活課題、例えば、お年寄りになって、独居生活になった時に、ゴミ出しが難しくなって、ゴミが知らず知らずのうちに溜まって、ゴミ屋敷になってしまうと、周りから嫌われて、孤立してしまうというような生活課題が身近で発見される。もしかすると同じような課題を抱えている人は、他にもいるのではないか。だとしたら、町内会だけの問題ではなくて、市全体できちんと対策を講じる方が良いのではないか。このように、身近な課題が広い圏域で共有されて、そして、対応の検討を通して、新たな活動の開発に繋がっていくんだ、ということが打ち出されています。

それから、地域福祉活動の財源確保に関しても触れておきます。
従来の地域福祉活動の財源といえば、共同募金の配分金、行政などからの補助金や交付金が主でありました。しかし、公的な財源確保が厳しい現状の中で、地域福祉活動の活動者には、主体的に財源を確保する取り組みが求められる方向になっています。
「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」報告書では、住民の地域福祉活動の資金は、住民自ら負担するか、自ら集めることが原則であるとし、そのため、資金を地域で集めることができる仕組みが必要であると指摘しています。

3.「地域包括ケア研究会報告書〜今後の検討のための論点整理〜において」

2009年、平成21年5月になると、厚生労働省による「地域包括ケア研究会報告書〜今後の検討のための論点整理〜 において」、地域包括ケアシステムの構築の推進が示されました。

4.「誰もが支え合う地域の構築に向けた福祉サービスの実現、副題として、新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」

2015年、平成27年6月になると、厚生労働省が、「新たな福祉サービスのシステム等のあり方検討プロジェクトチーム」を設置しました。このチームでは、誰もが支え合う地域の構築を目指していきました。
2015年、平成27年9月17日に、新たな福祉サービスのシステム等のあり方検討プロジェクトチームが、「誰もが支え合う地域の構築に向けた福祉サービスの実現、副題として、新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」を取りまとめました。これは、通称、新福祉ビジョンと呼ばれているものになります。
この新たな時代に応じた福祉の提供ビジョンの図を見てください。


福祉の提供ビジョンの図


その内容を要約すると、複合的な課題を抱える者等には、いわゆる制度の狭間の課題があるとして、このような者等に対し、市町村が実施主体になって、高齢・障害・児童・生活困窮という複数分野の機関が協働する、新しい全世代全対象型の包括的な相談支援システムの構築をして、誰もがそのニーズにあった支援を受けられる地域づくりの構築を目指すというものになります。そして、この新しい全世代全対象型の包括的相談支援システムについては、地域の中核となる相談機関が中心になってやっていくことが示されています。


5.「ニッポン一億総活躍プラン」

その後、2016年、平成28年6月2日に、「ニッポン一億総活躍プラン」が閣議決定されました。
このプランの4点目に、「地域共生社会の実現」という項目が出てきます。
その内容を要約すると、子供・高齢者・障害者等全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことができる「地域共生社会」の実現を目指すというものです。
ここにいう地域共生社会というのは、制度や分野ごとの縦割りとか、支え手・受け手という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超え、つながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会を目指すものになります。

このように、一億総活躍社会づくりが進められる中、福祉分野においても、「支え手側」と「受け手側」に分かれるのではなく、地域のあらゆる住民が役割を持ち、支え合いながら、自分らしく活躍できる地域コミュニティを育成し、公的な福祉サービスと協働して助け合いながら暮らすことのできる社会、この「地域共生社会」を実現する必要があると言われるようになっていきます。

6.地域力強化検討会の中間とりまとめ


そこで、2016年、平成28年7月に、厚生労働省は、「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部を設置しました。この「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部の中で、地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会(地域力強化検討会)を、平成28年10月から開催しました。
この地域力強化検討会は、先進的な地域福祉実践をしてきた人たちによって構成された委員会で、今後の方向性について検討してきた組織になります。
そして、平成28年12月26日に中間とりまとめを公表しました。
この中間とりまとめは、地域共生社会の政策動向の到達点と言えるものです。
この中間とりまとめで示された3つの地域づくりの方向性については重要です。
3つの地域づくりの方向性とは、@「自分や家族が暮らしたい地域を考える」という主体的、積極的な姿勢と福祉以外の分野との連携・協働によるまちづくりに広がる地域づくり、A「地域で困っている課題を解決したい」という気持ちで、様々な取り組みを行う地域住民や福祉関係者によるネットワークにより、共生の文化が広がる地域づくり、B「1人の課題から」、地域住民と関係機関が一緒になって解決するプロセスを繰り返して気づきと学びが促されることで、一人ひとりを支えることができる地域づくり。
これらが、3つの地域づくりの方向性になります。

この中間とりまとめを踏まえ、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案を通常国会に提出しました。
このような経緯で、社会福祉法は、2017年、平成29年6月2日に、「地域課題の解決力の強化」のために、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律で改正されており、翌年の2018 年、平成30年4月1日に施行されました。

2017年の社会福祉法改正は、以上の経緯で行われたということになります。
現状認識としての、少子高齢化、人口減少、課題の複合化や複雑化(8050問題、子育てと親や親族の介護が同時期に発生するダブルケア等)、社会的孤立や社会的排除(ゴミ屋敷問題等)、地域の福祉力の脆弱化という問題があることを背景にして、これらの問題に対してどのように対応していったらよいのかを模索した結果、その答えとして、地域共生社会の実現に向けた取組の推進をしていこうということになったわけです。ということで、現在では、「我が事・丸ごと」の地域づくり、新しい地域包括的な支援体制の整備が目指されているわけです。



社会福祉法(地域共生社会の実現) 2017年社会福祉法改正までの経緯をテーマとした講義動画です。ご試聴ください。


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■ 2017年の社会福祉法改正の内容

1.改正の重要な3点

2017年の社会福祉法改正の重要な点は、3つあります。

@我が事・丸ごとの地域福祉推進の理念を規定した(社会福祉法第4条第2項)。

A市町村による地域住民と行政等との協働による包括的支援体制づくりを規定した。
つまり、我が事・丸ごとの地域福祉推進の理念を実現するため、市町村が、地域住民の地域福祉活動への参加を促進するための環境整備。それから、住民に身近な圏域において、地域生活課題について、分野を超えて総合的に相談に応じる、いわば「丸ごと」の相談に対応する体制の整備、また多様・複合課題に対し、支援関係機関(例えば、福祉のほか、医療、保健、雇用・就労、司法、産業、教育などの機関)が連携し、地域生活課題の解決に資する支援を一体的に行う体制の整備、この3つの整備をすることで、包括的な支援体制づくりに努める旨を規定しました(社会福祉法第6条第2項)。

B地域福祉計画を単なる任意規定から「策定するように努める」という文言を追加するとか、福祉の各分野における共通事項を定め、上位計画として位置づけた(社会福祉法第107条第1項第1号、第108条第1項第1号)。

以上の3点が改正の重要な点となっています。

特に社会福祉法第4条は、地域福祉の推進という大事な条文であり、また、2017年の社会福祉法改正にあたり、文言の変更があったところでもありますので、必ず確認しておく必要があります。 また、第5条、第6条、第106条の2、第106条の3、第107条と第108条も重要です。

それでは、個別に確認していきますが、皆さんにおかれては、必ず条文を直接確認するようにしてください。そうしないと、理解がしにくいと思います。

2.第4条について


まず、社会福祉法第4条の「地域福祉の推進」という条文について確認をします。
ちなみに、地域福祉という用語は、2000年に初めて法的に位置づけられました。ですから、地域福祉は比較的新しい概念で、これからどんどんと発展していく領域になります。

それでは、条文を確認しておきます。
第4条第2項 地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者(以下「地域住民等」という。)は、相互に協力し、福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されるように、地域福祉の推進に努めなければならない。
この条文の冒頭には、地域福祉の推進主体者として、@地域住民、A事業者(社会福祉を目的とする事業を経営する者)、B活動者(社会福祉に関する活動を行う者 ボランティア、民生委員など)の3者が位置づけられています。
日本では、高齢化や核家族化が進み、福祉サービスは、マイノリティ(少数派)の問題ではなく、普遍的なものになってきました。高齢者の1割は認知症になるとも言われています。国や市町村などの地方自治体だけの対応では手に負えず限界にきていました。そこで、地域住民らで対応することが期待されるようになったわけです。このような背景があって、社会福祉法では、地域住民等は、地域福祉の推進に努めなければならないことを明確化しました。
住民であるこの3者が相互に協力して、役割分担をして、地域福祉の推進に努めることとされています。これは、地域福祉における住民主体の基本方針を規定するものになります。

そして、地域福祉に係る専門職や機関は、このような地域福祉の主体者が主体的に活動ができるように、側面的支援をしていくことが求められます。要するに、地域住民等は、そのままでは容易に主体性を具現化できないので、ワーカーらが、地域住民等の主体性を引き出す必要があるということです。このワーカーらの関与により、地域住民等が組織化され、実践主体としての性格を有していくということになります。
例えば、ゴミ屋敷問題なんかは、従来の考え方であれば、近隣住民は、役所に対し、「なんとかしてくれ。臭くて生活できない。」と申し入れたりして、自分たちでなんとかしようという発想はなかなかありません。また、役所は役所で、「保健師に衛生指導に行ってもらいます。」とか、「ゴミ屋敷にある物がゴミの集積場所まで持ってこられれば、清掃事務所の仕事として対応できますが、そうでなければ、ゴミ扱いはできませんので、全く手が出せません。」と言って説明するわけです。しかし、じゃあ、制度の狭間の問題だと言うだけで、「放置するしかないのか」と溜息をついてばかりではいられないわけです。そこで、最近の地域福祉はこう考えます。ゴミ屋敷になるのは、そこの住人に何か問題を抱えているからだ。ゴミ屋敷問題は、社会的孤立の象徴でもある。ゴミ屋敷は、そこに何年間も人が訪ねていないということの証です。まさにゴミ屋敷の住人は社会的に孤立していたわけだと。この社会的孤立を地域住民が主体的に関わって解決をしていく。地域住民がゴミ屋敷の住人に声掛けしたり、ゴミを一緒に片付けたり、みんなで支え合ってやっていく。これで社会的な孤立が解消され、住人自身の問題の解決のきっかけにもなる。こういうのが地域共生社会なんだと。その際に、コミュニティソーシャルワーカーが間に入って、地域住民の主体性を引き出していく必要があるわけです。ワーカーの関与によって、地域住民らが組織化され、実践主体としての性格を有していくということになるわけです。このようなことができれば、法律がなく、いわゆる制度の狭間にある問題と言われるものも、予算をかけることなく、解決していけるということになります。


この第4条については、地域福祉の推進主体が、住民、事業者、活動者であると規定されているわけですが、この部分については、2017年改正において、括弧として、「以下、地域住民等という」という文面が入りました。
また、第4条において、2017年改正前では、「福祉サービスを必要とする地域住民が、・・あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられるように」という条文であったものが、言い回しが変わり、参加の機会が確実に与えられるというような言い回しになり、「福祉サービスを必要とする地域住民が、・・あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されるように」という新しい条文になっています。

そして、第4条はもともとは第1項のみでしたが、これが、2017年の社会福祉法改正で、もう1項追加され、新しく、「我が事・丸ごと」の地域福祉推進の理念の規定を付け加えました。
ここでは、地域福祉の推進の理念として、地域住民等による地域生活課題の把握とその解決が目指されています。すなわち、地域住民等は、個人とその世帯が抱える福祉、介護、介護予防、保健医療、住まい、就労、教育に関する課題、そして、福祉サービスを必要とする地域住民の地域社会からの孤立に関する課題、それから、あらゆる分野に参加する機会が確保される上での各般の課題など、以上の「地域生活課題」について把握して、支援関係機関と連携等してその解決を図ることとされています。

なお、福祉サービスを必要とする地域住民においても、あらゆる分野に参加する機会が確保される上での各般の課題の解決を図っていくとあり、これは何を意味するのか、よく考えて欲しいところであります。
これには、地域共生社会の実現のためには、支え手側と受け手側に分かれるのではなく、誰もが役割を持ち、活躍できることが条件であり、福祉サービスの利用者も含めて、あらゆる地域住民が地域社会に参加する機会が確保され、地域福祉を推進する主体になる可能性があることを目指すという意味が込められています。


3.第5条について

第5条は、福祉サービスの提供の原則が規定されています。
第5条では、社会福祉を目的とする事業を経営する者のことが規定されています。
社会福祉を目的とする事業を経営する者は、その提供する多様な福祉サービスについて、利用者の意向を十分に尊重し、地域福祉の推進に係る取り組みを行う他の地域住民等との連携を図り、かつ、保健医療サービスや関連するサービスとの有機的な連携を図るよう創意工夫を行いつつ、これを総合的に提供することができるように事業の実施に努めなければならないと規定されています。
この条文のポイントは、社会福祉を目的とする事業を経営する者は、地域福祉の推進の主役である地域住民等との連携を図ったりして、福祉サービスを総合的に提供することができるように事業の実施に努めるということになります。


4.第6条について

第6条は、福祉サービスの提供体制の確保等に関する国及び地方公共団体の責務が規定されています。
従来は、国及び地方公共団体の責務として、国及び地方公共団体は、社会福祉を目的とする事業を経営する者と協力して、福祉サービスを提供する体制の確保に関する施策等を講じることを求める、とのみ規定をしていました。
そして、この規定の意味するところは、それまでは社会福祉協議会が地域福祉のことをやってきたわけですが、それでは通らなくなった。つまり、従来の社会福祉事業法から名称変更され、新たに社会福祉法が制定された2000年、平成12年からは、政策主体である行政が、地域福祉の推進のために必要な各般の措置を講じ、仕組みや制度を作るよう努めなければならなくなり、福祉サービスの提供体制の確保等について責務を負うようになったということです。

2017年の社会福祉法改正では、今度は、第6条に第2項を追加して、我が事・丸ごとの地域福祉推進の理念を実現させるため、国及び地方公共団体は、地域住民等が地域生活課題を把握し、支援関係機関(地域住民ボランティア、地区社協、地域包括支援センター、地域子育て支援センターなどと呼ばれる地域子育て支援拠点など)との連携等により、その解決を図ることを促進する施策、その他、地域福祉の推進のために必要な各般の措置を講ずるよう努めなければならないとして、福祉サービスの提供体制の整備等に関する国及び地方公共団体の責務について明記しています。

5.第106条について


第106条の2は、地域子育て支援拠点事業等を経営する者の責務に関する規定になります。
これは、各自条文を確認しておいてください。

第106条の3は、市町村による地域住民と行政等との協働による包括的な支援体制の整備に関する規定になります。
この条文では、市町村は、各種事業の実施その他の各般の措置を通じ、地域住民等及び支援関係機関による、地域福祉の推進のための相互の協力が円滑に行われ、地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制を整備するよう努めるものとする、と規定されています。要するに、市町村に対し、地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制を整備するよう努めよ、ということで、市町村に努力義務を課しているわけです。


6.第107条、第108条について


第107条は、市町村地域福祉計画の策定を規定しています。
第108条は、都道府県地域福祉支援計画の策定を規定しています。
これらの地域福祉計画ですが、それまでは、単に計画策定について規定していただけだったのが、両者とも、2017年改正で、計画の策定は、任意から努力義務だとされ、努力義務化されました。
また、市町村と都道府県は、定期的に、策定した地域福祉計画について、調査、分析及び評価を行うように努め、必要な場合に変更するものとするとの規定を追加しました(第107条第3項、第108条第3項)。これについても、努力義務となっております。
また、都道府県や市町村は、それぞれの地域福祉計画を策定する際、福祉の各分野(高齢者、障がい者、児童)における共通して取り組むべき事項を定め(第1項第1号)、他分野の上位計画としての整合性を図り、総合的に推進していくことが求められています。

また、地域福祉の推進と言えば、社会福祉協議会の役割は重要であり、欠かせないわけですが、市町村社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画というものがあります。
そこで、この地域福祉活動計画と市町村地域福祉計画はどのような関係にあるのかが問題になってきます。
この点については、厚労大臣指針告示3局長通知「地域共生社会の実現に向けた地域福祉の推進について」の中では、市町村地域福祉計画と市町村社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画を一体的に策定したり、内容を一部共有したり、地域福祉活動計画に市町村地域福祉計画の実現を支援するための施策を盛り込むなど、相互に連携を図ることが求められています。ただし、ここは覚えておきたいポイントになりますが、社会福祉法等の法律レベルにおいて、市町村地域福祉計画と地域福祉活動計画との一体的策定は義務づけられていません。あくまでも法律ではなく、局長の通知レベルで一体的策定が求められているということです。


社会福祉法(地域共生社会の実現) 2017年社会福祉法改正の内容をテーマとした講義動画です。
ご試聴ください。


■ 2020年の社会福祉法改正の経緯

1.2つの最終取りまとめ

次に移りますが、社会福祉法は、2020 年、令和2年にも大きな改正がされています。
この改正に影響を与えたのが、2つの最終取りまとめになります。
まず1つ目が、2016年、平成28年10月に開催された地域力強化検討会が、2017年、平成29年9月12日に出した最終取りまとめです。これは、日本福祉大学の原田先生が座長を努めたものになります。
そして、2つ目は、2019年、令和元年5月に設置された「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」(地域共生社会推進検討会)が、2019年12月に出した最終取りまとめになります。

2.地域力強化検討会の最終取りまとめ


「ニッポン一億総活躍プラン」(2016年6月2日閣議決定)に掲げられている地域共生社会の実現について、具体的に検討するため、2016年10月に「地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会(地域力強化検討会)」(座長:原田正樹 日本福祉大学教授)」が設置されましたが、その最終とりまとめが、地域力強化検討会の最終取りまとめになります。

まず地域力強化検討会の最終取りまとめには、地域共生社会の実現に向けた取組が示されました。そしてここでは、地域共生社会の実現に向けた5つの視点が示されています。
@共生文化
それぞれの地域で共生の文化を創出する挑戦だと。
A参加・協働
すべての地域の構成員が参加・協働する段階へいこう。
B予防的福祉の推進
重層的なセーフティネットの構築をしていこう。
C市町村における包括的支援体制
市町村における包括的な相談支援体制の整備ということで、多機関協働による支援をしていく。そして、多機関協働のためには仕切り役として中核的な役割を果たす機能が必要であり、それにふさわしい機関の存在が求められる。
D多様な場の創造 福祉以外の分野との協働を通じた、「支え手」、「受け手」が固定されない、参加の場、働く場の創造
となっています。
では、個別に見ていきます。

@それぞれの地域で共生の文化を創出する挑戦 〈共生文化〉
社会的孤立や社会的排除をなくし、誰もが役割を持ち、お互いに支えあっていくことができる地域共生社会を創出することは、高い理想であるが、あきらめることなく、それが文化として定着するよう挑戦し続けていくことに価値がある。
Aすべての地域の構成員が参加・協働する段階へ 〈参加・協働〉 地域住民、民間事業者、社会福祉法人、民生委員・児童委員、行政等といった多様な構成員が、それぞれに活動するだけではなく、自らの地域福祉を推進していくために参加・協働することが求められている。それぞれの地域で共生社会の実現に向けて、具体的に連携する「仕組み」と事例に基づく「対話・協議」をしていく過程が大事であり、そのような場をつくることが求められる。
B重層的なセーフティネットの構築 〈予防的福祉の推進〉
これからの社会福祉にとって重要な視点は「予防」である。これまでの申請主義による「待ち」の姿勢ではなく、抱えている問題が深刻化し、解決が困難な状態となる前に早期に発見して支援につなげていくことが大切である。地域の中で重層的なセーフティーネットを構築することが必要がある。
ここでは、人と人とのつながりそのものが、セーフティネットの基礎となるという考えがあります。地域における出会いや学びの場を作り出し、多様なつながりや参加の機会が確保されることで、地域の中での支え合いや緩やかな見守りが生まれると言っています。
そして、専門職により、多様なつながりが生まれやすくするための環境整備をしていったり、あるいは、伴走型支援として、支え手をコミュニティにつなぎ戻していくことが提示されています。
C市町村による包括的な相談支援体制の整備 〈包括的支援体制〉
社会的孤立、制度の狭間、サービスにつながらない課題、あるいは将来への不安について、地域全体で支え合うことを目指していく必要がある。
具体的には、多機関協働による支援をしていく。
個別の課題解決のために、各種専門機関等により、支援チームで対応していく。その際、既知の関係者のみならず、本人の意思やニーズに応じて新たな支援者を巻き込むことが必要である。こうした支援の実践を通じて、分野横断的な関係者の「顔の見える」関係(ネットワーク)を広げていく。ここでは、個人支援レベル、機関・団体の活動者や実務者レベル、それらの代表者レベルの各種の重層的な連携が想定されています。
このネットワークの形成や支援チームの編成に当たっては、関係者を仕切る人が必要となってくる。要するに、地域の多機関協働の中核的な役割を果たす機能が必要なわけである。例えば、生活困窮者自立支援制度における自立相談支援機関や地域包括支援センター、基幹相談支援センター、社会福祉協議会、社会福祉法人、医療法人、NPO法人、行政など様々な機関がその中核的な役割を担うことがあり得ると。このように様々な機関があるわけであるが、その機関の中で、その地域に応じて、その地域で協議し、ふさわしい機関が担っていくことが求められる。
D福祉以外の分野との協働を通じた、「支え手」「受け手」が固定されない、参加の場、働く場の創造〈多様な場の創造〉
地域の各分野の課題に即して福祉分野から地域づくりについて積極的に提案等をしていくことを通じ、これまで支援の「受け手」であった人が「支え手」に回るような、参加の場や就労の場を地域に見出していく。また、必要に応じてサービス開発やそうした場を創り出していく社会資源開発が必要である。
地域の各分野の課題に即して、福祉分野から地域づくりについて積極的に提案等をしていく。例えば、農村部であれば、耕作放棄地があったりしますが、この耕作放棄地を上手く活用していく。支援の受け手であった人が農業をやるようになり、この人達が農業の次の担い手になったりする可能性があります。また、シャッター商店街がある地域では、シャッターが閉まってしまった空き店舗を使って、「ちょっと、サロンでもやってみようや」ということで、商店街の活性化に繋がる可能性があります。こういったことを通じ、これまで支援の「受け手」であった人が「支え手」に回るような、参加の場や就労の場を地域に見出していく。また、必要に応じてサービス開発やそうした場を創り出していく社会資源開発が必要である。

それから、地域福祉活動の財源確保の点についても触れておきます。
「地域力強化検討会最終とりまとめ」では、地域の課題を地域で解決していくために必要とされる財源を確保するために、事業の一体的な実施による各分野の補助金等を柔軟に活用していくことに加えて、@共同募金によるテーマ型募金や市町村共同募金委員会の活用・推進、AクラウドファンディングやSIB(Social Impact Bond)、ふるさと納税、社会福祉法人による地域における公益的な取組等を取り入れていくことが有効であると記されています。また、企業の社会貢献活動等とも協働し、財源等を必要としている主体(活動者)と資源を保有している企業等のマッチングの必要性も指摘しています。
この中で、いろいろと小難しいものが多数出てきましたので、説明をしておきます。
・テーマ型募金とは、緊急的に解決すべき特定の地域課題やそのための活動を共同募金の募金テーマとして掲げ、課題解決に取り組む団体が主体となって、個人や企業に対して地域課題や自らの活動を伝え、寄付を訴えかける募金手法のことをいいます。寄付者にとっては応援したいテーマを選んで募金することができ、寄付者の意志が反映されやすい仕組といえます。
・市町村共同募金委員会の活用 1959年、昭和34年、歳末たすけあい募金が、共同募金の一環となっています。そして、歳末たすけあい運動の内、寄付者からの寄付金や品物に関し、共同募金として、各都道府県共同募金会や市町村共同募金委員会が取り扱うことになっています。市町村共同募金委員会の活用・推進をして、歳末たすけあい運動をして、募金を集めることが求められています。
・クラウドファンディング 群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語になります。多数の人による少額の資金が他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを意味します。インターネットで行われることが多いという特徴があり、幅広い分野への出資に活用されています。
・SIBの仕組み これは、@投資家がサービス提供者にサービスを提供するための事業資金を提供します。Aサービス提供者がサービス対象者に対して、その専門性とノウハウを活用した様々なサービスを提供します。Bサービス提供者が提供するサービスの成果について、独立した評価機関が予め設定された成果指標とその測定方法に基づき評価します。C成果目標を達成した場合のみ、行政が投資家に成功報酬を償還し、成果目標を達成しなかった場合、行政は支払う必要はありません。こういう仕組みの手法になります。要するに、SIBとは、社会的課題の解決と行政コストの削減を同時に目指す手法で、民間資金で優れた社会事業を実施し、事前に合意した成果が達成された場合、行政が投資家へ成功報酬を支払うというものになります。
・ふるさと納税 生まれた故郷や応援したい自治体に寄付ができる制度です。手続きをすると、寄付金のうち2000円を超える部分については、所得税の還付、住民税の控除が受けられます。納税者自身で寄付金の使い道を指定でき、地域の名産品などのお礼の品(寄付金の30%程度の商品)もいただけるという魅力的な仕組みになります。

3.地域共生社会推進検討会の最終取りまとめ


次に、地域共生社会推進検討会の最終取りまとめでは、市町村における包括的な支援体制の整備のあり方などが示されました。すなわち、断らない相談支援、参加支援、地域づくりに向けた支援を、一体的に行う新たな事業の創設を提言しています。
そして、ここにいう参加支援としては、既存の地域資源と狭間のニーズを持つ者との間を取り持つ、新たな参加支援の機能が重要であるとして、その参加支援を創設することが求められるとしています。
また、地域づくりに向けた支援として、居場所としての地域のプラットフォームの確保が必要となるが、この地域のプラットフォームは、住民、地域関係者、行政などがその都度集い、相談、協議し、学び合う場である必要があると提言しています。

以上の2つの最終とりまとめを踏まえて、2020年の社会福祉法改正は、地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律とされていて、介護保険法、老人福祉法なども合わせて改正されています。

■ 2020年の社会福祉法改正の内容


では、何を目指してどう変わったのかを確認します。

1.改正の趣旨

改正の趣旨について確認しておきます。 地域共生社会の実現を図るため、地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する包括的な福祉サービス提供体制を整備する観点から、@市町村の包括的な支援体制の構築の支援、A地域の特性に応じた認知症施策や介護サービス提供体制の整備等の推進、B医療・介護のデータ基盤の整備の推進、C介護人材確保及び業務効率化の取り組みの強化、D社会福祉連携推進法人制度の創設等の所要の措置を講ずるということが趣旨とされています。
この所要の措置のうち、社会福祉法に係るものは、@市町村の包括的な支援体制の構築の支援とD社会福祉連携推進法人制度の創設になります。

では、D社会福祉連携推進法人制度について触れておきます。
日本においては、少子高齢化、人口減少という人口動態の変化や福祉ニーズの複雑化・複合化(一つの世帯において複数の課題が存在している状態を指しますが、例えば、8050世帯や、介護と育児のダブルケアなど)の中で、社会福祉法人は、社会福祉法人の経営基盤の強化を図るとともに、今日の福祉ニーズに対応することが求められています。このため、社会福祉法人間の連携方策が有効だということで、社会福祉法人を中核とする非営利連携法人である「社会福祉連携推進法人」を創設することにしました。スタートは、2022年度、令和4年度からです。
この社会福祉連携推進法人は、営利を目的としていない一般社団法人になりますが、都道府県知事等の所轄庁の認定を受ける必要があります。
この社会福祉連携推進法人の構成員である社員の範囲は、社会福祉法人その他社会福祉事業を経営する者(NPO法人など)、社会福祉法人の経営基盤を強化するために必要な者になります。
また、社会福祉連携推進業務としては、
・ 地域共生社会の実現に資する業務の実施に向けた種別を超えた連携支援
・ 災害対応に係る連携体制の整備
・ 社員である社会福祉法人への資金の貸付
・ 福祉人材不足への対応(福祉人材の確保や人材育成)
・ 設備、物資の共同購入
などになります。

なお、ここは注意して欲しいところになりますが、社会福祉連携推進法人は、社会福祉法第2条を根拠とする社会福祉事業を行うことはできません(社会福祉法第132条第4項)。

2.第4条について

2020年の社会福祉法改正によって、社会福祉法第4条に加わった条文があります。
第4条第1項 地域福祉の推進は、地域住民が相互に人格と個性を尊重し合いながら、参加し、共生する地域社会の実現を目指して行われなければならない。
これが、2020年の社会福祉法改正で加わった理念です。この条文が加わった趣旨ですが、個人の自立の助長をしても、現在社会問題になっている孤独や社会的孤立が解消されないと、問題は繰り返されることになり、結局は社会とのつながりでつまづき、自立ができなくなる。だから、地域共生社会を創っていくんだ、目指すんだということを謳ったわけです。

3.第6条について

改正された条文としては、第6条があります。
第6条第1項で、福祉サービスの提供体制の確保等に関する国及び地方公共団体の責務が規定されていましたが、第2項が一部改正されています。
改正内容としては、国及び地方公共団体の責務として、地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備、その他地域福祉の推進のために必要な各般の措置を講ずるよう努めるとともに、当該措置の推進にあたっては、保健医療、労働、教育、住まいおよび地域再生に関する施策、その他の関連政策との連携に配慮するよう努めなければならないとしています。
国及び地方公共団体の責務に、包括的な支援体制の整備に関する規定も加わり、従来よりもより行政の政策責任の範囲が広がってきています。

それから、第6条については、第3項が追加されています。
市町村が行う重層的支援態勢整備事業、その他地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備に関する国及び地方公共団体の責任について規定されています。

4.第106条について

社会福祉法第106条の3第1項で、新たな事業である重層的支援体制整備事業の創設を受けて、市町村の責務を具体化して、地域住民等及び支援関係機関による、地域福祉の推進のための相互の協力が円滑に行われ、地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制を整備するよう努めるものとするとしています。

それから、社会福祉法に第106条の4が追加されています。
重層的支援体制整備事業が創設されました。創設は、2021年、令和3年4月になり、まだ新しい事業になります。
この第106条の4の規定によりますと、市町村は、社会福祉法に基づく事業及びその他の法律に基づく事業を一体のものとして実施することにより、地域生活課題を抱える地域住民及びその世帯に対する支援体制並びに地域住民等による地域福祉の推進のために必要な環境を一体的かつ重層的に整備する事業として、重層的支援体制整備事業を行うことができるとされています。
この重層的支援体制整備事業は、市町村全体で、「ここは担当ではありません」といった断る福祉と決別して、「断らない包括的な支援体制」を構築できるようにするというものになりますが、現在のところ、任意事業になります。

では、次に進みます。この図(新たな事業の全体像)を見てください。

2020年新たな事業の全体像


この重層的支援体制整備事業は、市町村において、地域住民の複合・複雑化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制を整備するため、
@断らない相談支援
A参加支援(本人やその世帯の状態に合わせて地域資源を活かしながら、就労支援、居住支援などを提供することで、社会とのつながりを回復する支援)
B地域づくりに向けた支援(地域社会からの孤立を防ぐとともに地域における多世代の交流や多様な活躍の機会と役割を生み出す支援)
の3本柱で一体的に実施するように構成されています。
この新たな事業である重層的支援体制整備事業は、先程も触れたように、実施を希望する市町村の手あげに基づく任意事業になっています。ただし、事業実施の際には、@からBの支援は必須となります。というのは、市町村が新たな事業について「相談支援」、「参加支援」、「地域づくりへの支援」を一体的に実施することで、相互作用が生じ、支援の効果が高まるからです。
では、3本柱を個別に見ていきます。

@相談支援
介護(介護保険の介護予防事業である地域支援事業)、障害(障害者等が、自立した日常生活または社会生活を営むことができるよう、住民に最も身近な市町村を中心として実施される地域生活支援事業)、子ども(子ども及びその保護者等、又は妊娠している方がその選択に基づき、教育・保育・保健その他の子育て支援サービスを円滑に利用できるよう、相談支援等を行う利用者支援事業)、困窮(生活困窮者自立相談支援事業)の相談支援に係る事業を一体として実施し、本人・その世帯の属性にかかわらず受け止める相談支援を実施するものになります(社会福祉法第106条の4第2項第1号)。要するに、相談者がそれぞれ個別の機関に行った時に、たらい回しにしない、断らない相談支援になります。 この図を見てください。

相談支援にかかる一体的実施のイメージ


初期の相談段階で1次アセスメントをして、複合的な課題とか、単一機関では支援困難な事例であった場合には、本人の同意を取りながら、中核機関に繋げていくことになります。ですから、この中核機関の設置というのもこの重層的整備体制事業では求められています。で、中核機関で行うのが重層的支援会議になります。この重層的支援会議で多機関協働の事例検討を行っていこうということになっています。要するに、単一機関では解決できない複合的な課題は中核機関において、しっかりと2次アセスメントをして、重層的支援会議を行いましょうということになっています。ここで重要なのは、アセスメントで得た情報をもとにして、必要な関係機関と事例検討を行い、支援の役割分担を決めていくことです。そして、多機関協働によって困難事例を解きほぐすということが、ここでの役割になってきます。
で、この重層的整備体制事業は、断らない相談支援を行おうというわけですが、このような中核機関をおいて、重層的支援会議を行うことができると、例えば、包括支援センターだとか、あるいは、障害者の基幹型支援センターだとかに属しておられる方が、支援困難な事例に出くわした時に、「私は、高齢専門なので、精神は苦手なんだよな」、「私は、子ども専門なので、認知症の BPSD のややこしい話とかできないし」という心配事を抱えこむことがなくなるわけです。
では、ここのところを具体例を挙げて説明します。
例えば、今よく言われてる8050問題のような、80歳代の要介護の母親と50歳代の例えば精神障害の息子が同居していて、生活困窮になっていて、地域から孤立しているなんていう事例がよくあります。そういう時に、例えば、障害の相談支援センターが介入してみたら、お母さんが認知症だったと。従来であれば、面倒なものは蓋をしたい、抱えたくないということで、困難事例は正直断りたくなったりするわけなんです。「さあ、どうしよう」という話になったりします。自分たちのところでは認知症のことよく分からないよね、ということが出てくるわけです。
そこで、このような支援困難なケースについては、特定の機関などが抱え込まなくてもよいように、重曹的支援会議につなげていって、自分たちにとっては不得意な部分が得意な人たちがいるわけですよね。例えば、精神障害の専門家の方、認知症の専門家の方、生活困窮の専門家の方、そして地域で見守ってる人たち。そういう人たちを集めて、それぞれの知恵を得ながら、こんがらがった問題を解きほぐしていって、支援計画を策定していく。客観的な専門的な領域のところは、人の力、機関の力を借りて分析をしていて、本人に寄り添った支援計画を作っていって、なおかつ対応もチームで役割分担していくことになります。役割分担によって、1つの機関で背負い込まないことになりますから、困難度が軽くなる。解決はしないまでも、困難度は軽くなる。そして、しっかりとモニタリング(観察)をしていけば解決にもつながる可能性があるわけです。こういう仕組みが重層的支援体制になります。

この相談支援においては、アウトリーチも含め継続的につながり続ける伴走支援を行っていくことが予定されています(社会福祉法第106条の4第2項第4号)。
このアウトリーチですが、地域福祉の実践においては不可欠の技法となっています。
日本の福祉制度やサービスを利用する際には、基本的には、係への申請が必要とされます。行政は、問題を抱えている人が相談に来てはじめて介入するという申請主義ですから、来た人は受け付けます。しかし、行政から、「何か問題ないですか?」と御用聞きをしてくれることはないわけです。
でも、想像してみてください。そもそも地域の住民は、自分が困っていても、困っていることを認識しづらい場合もあれば、あるいは何に困っているのか、どんな制度を使えるのか、どこに申し込めばよいのかなど、多くの場合はこれらの点がよく分かっていないのが実情です。また、申請に行きたくても、家族の介護などで自分が身動きできない場合などもあります。このような場合には、援助者が助けを必要とする住民のところに駆けつけて行き、一緒に解決に向かっていくということが求められます。今回のこの相談支援では、市町村によるアウトリーチも含めた支援を予定しています。そういう意味で画期的だと思います。
例えば、ひきこもりの状態にある人の場合には、問題自体がひきこもりですから、どこかに申請をしにいくということはおよそ考えられないわけです。ひきこもりの状態にある人に対しては、アウトリーチをして、本人の心をふわっと開いてもらうために、継続的に本人の自宅に通って、声掛けしたり、手紙を残したり、興味・関心に合わせた情報提供を行うとか、あるいは家族との関係性に配慮したうえで、家族支援を通じて本人と関わる糸口を見つけるといった支援をしていく必要があるわけです。

あと、アウトリーチで付け加えると、住民が地域福祉活動にアクセスしやすいように住民懇談会を開いたり、地域におけるネットワークを作ることも、アウトリーチに含まれます。アウトリーチは、大変重要な技法なので、是非学習を深めておいてください。

A参加支援
断らない相談支援という「入口」が機能するためには、本人や世帯と社会とのつながりの確保や参加を支援し、継続的な関わりの接点を確保する機能(参加支援)が必要です。
この社会とのつながりを回復することはとても大事になります。
それはなぜか。そう、例えば、経済的困窮が解決できて、自立ができたとしても、社会でこの人の孤立を解決しないと問題は繰り返されることが多いからです。とくに社会的孤立など関係性の貧困や社会的排除が、課題の複合化・複雑化の背景となっていることが多いわけです。なんとか自立ができていても、頼れる家族や親族がいない、社会からも孤立している。こういう状態であったとき、ちょっとしたことがまた転落人生を送ってしまうきっかけになってしまうということは往々にしてあるわけです。ですから、本人・世帯と地域との接点をどのように確保するかが重要ですよね。そこで、重曹的な関係、つまり、その本人と支援者だけではなくて、色々な人たちとの関わりを、そのつながりを豊かにしていくことが、その人の自立を継続していく条件と言っても過言ではないわけです。例えば、ホームレスの人をなんとか説得してアパートに入ってもらった、そして、住所が決まったということで生活保護も受けて、さあ、これで自立のレールに乗っただろうということで、支援をやめてしまうと、例えば、半年、1年経過すると、そのアパートがゴミ屋敷になっている。なぜか? そう、経済的な支援だけではその人の問題解決になっていないということなんです。やはり人と人とのつながりですね。地域でのつながりを作っていかないと、つまり、社会的孤立を解消していかないと、その人が自立し続けるということは大変難しいわけです。
そのために、2020年の社会福祉法改正では、既存の取組では対応できない狭間のニーズ(例えば、世帯全体としては経済的困窮の状態にないが、子がひきこもりであるなど)に対応するため、本人のニーズと地域の社会資源との間を取り持つことで多様な資源の開拓を行い、社会参加、就労支援や一時的な住まいの提供となる居住支援、居場所機能などを提供するなどして、多様な社会とのつながりづくりに向けた活動をする支援を入れてきました(社会福祉法第106条の4第2項第2号)。
参加支援の取組事例を紹介しておきます。
まず既存制度の支援、サービスで対応対応できる場合はそれで対応すればよいわけですが、相談の中には、既存制度では利用できる資源が存在しない、いわゆる狭間のニーズが想定されます。そのため、これらに対応する参加支援の機能を新たに整備する必要があるわけですが、いろいろな取組があります。

・生活困窮者の就労支援施設において、経済的な困窮状態にないひきこもり状態の人に対して、制度外で、就労支援(就労準備支援)を実施する。
・就労継続支援B型の事業所において、障害福祉サービスの対象とならないひきこもり状態の人に対し、制度外で、就労支援を実施する。
・養護老人ホームにおいて、居住に課題を抱える者への支援のため、制度外で、空床を活用し契約による入所を実施する。

B地域づくりに向けた支援
介護(一般介護予防事業、生活支援体制整備事業)、障害(地域活動支援センター)、子ども(地域子育て支援拠点事業)、困窮(生活困窮者のための共助の基盤づくり事業)の地域づくりに係る事業を一体として実施し、地域社会からの孤立を防ぐとともに、地域における多世代の交流の場(プラットホーム 住民同士が出会い参加することのできるような場や居場所)や多様な活躍の場を確保する地域づくりに向けた支援を指します(社会福祉法第106条の4第2項第3号)。
なお、地域のプラットホームは、住民、地域関係者、行政などがその都度集い、相談、協議し、学び合う場である必要があります。
やはり、社会的孤立ということを考えれば、それは本人や家族だけの支援では埒があかないわけです。だって、社会的孤立は、家族からの孤立もそうですが、それにとどまらず、地域、雇用、社会的な役割等によって社会的孤立が生み出されているからです。地域全体が変わっていかなければ、社会的孤立の解消にはなっていかないわけです。ですから、地域づくりに向けた支援が必要になってきます。
さらに言うと、社会的孤立が長期化すればするほどセルフネグレクト、つまり、俺のことはほっといてくれ、どうでもいいだろ、という状況が長期化することで、最悪の良くない状況になれば、それが自殺、自死。孤立死等の問題に繋がっていく。で、それが長期化すればするほど孤立の問題が社会的排除にもつながってきます。繰り返しですけど、社会的孤立というのは、単に本人が孤立しているということだけではなくて、家族、地域、雇用、社会的役割など社会の変化によって社会的孤立という状況が生み出されてくるわけです。だから、まさに、この社会的孤立は、社会構造の中で孤立という問題を捉えていかなければならない。だから、地域づくりに向けた支援が制度化されたわけです。

この重層的支援体制整備事業ですが、その実施に当っては、社会福祉士や精神保健福祉士が活用されるよう努めることとされています。

重層的支援体制整備事業の実施に要する費用は、どこが負担するのか。
これは、市町村が支弁します。
国、都道府県は、市町村に対して、重層的支援体制整備事業の費用の一部を交付金として交付することになっています(社会福祉法第106条の8、第106条の9)。


社会福祉法(地域共生社会の実現) 2020年社会福祉法改正までの経緯と内容をテーマとした講義動画です。
ご試聴ください。

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