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あるある相談(納税の猶予・徴収の猶予の活用を)


今回は納税のことを扱います。
我々国民は、納税の義務がありますよね。でも、何らかの事情で今はちょっと無理、支払いたくても支払えないって時があると思います。
そういうときにどのような制度があるのかをみていきます。

債務整理の相談を受けると、貸し金債務以外にも税金や社会保険料の滞納分も多額にあって、税金等を払えないという人が多数います。
弁護士が扱う案件は、税金以外の債務の整理が主になって、破産申立、個人再生申立、任意整理等がある。
しかし、税金以外の債務の整理をしても、困窮者の生活の全体としての解決にはならない。
そこで、困窮者の全体としての解決に結びつけるため、今回は、主として納税の猶予、徴収の猶予を取り上げたいと思います。
なお、国税通則法第46条では、納税の猶予、地方税法第15条では、徴収の猶予と記載されています。
そして、納税の猶予の規定については、地方税の徴収の猶予にも準用されていますので、地方税は、国税と同じに考えて貰えばよいと思います。


1.実情について

例えば、税金が払えないということで、納税相談に行きくと、その結果としては、そのほとんどは税務署や県税事務所等との分納交渉で済まされているのが現状です。
私のところに来る相談者のほとんどの方は、地方税や社会保険料の滞納にかかる市役所とのやりとりで、例えば、月々1万円ずつ分納しているとか、という話を良く聞きます。
しかし、「納税の猶予・徴収の猶予」の申請をした方はほとんどいません。
この申請は、制度上は、税金を納付することができない状況にあるとき、誰でも提出できますが、実際に申請しているケースは少ないようです。

「納税の猶予等の取扱要領」より抜粋
 特に、納税者から、その納付すべき国税につき即時に納付することが困難である旨の申出等があった場合には、その実情を十分調査し、納税者に有利な方向で納税の猶予等の活用を図るよう配意する。
(第1章1)

この取扱要領からすると、納税者に有利な方向で納税の猶予等の活用を図るよう配意するとのことなので、職権による分納交渉で済まされるということはないはずです。
ところが、実際は、この取扱要領は励行されておらず、職権による分納交渉で済まされている。
そして、仮に税務署の窓口に、猶予申請を提出しても、いろいろ難癖を付けて、受け取らない事例もあります。
これは国税通則法違反です。
国税の場合、猶予申請書の記載事項は、国税通則法施行令15条の2で決められています。
地方税の場合は、各市町村の条例(条例はインターネットで確認できます。)で決められています(地方税法15条の2)。
必要な記載事項が記入されていれば、行政は受理しなければなりません。

通則法施行令第15条の2(納税の猶予記載事項)
1.納付すべき国税の年度、税目、納期限、金額
2.当該猶予を受けようとする金額
3.当該猶予を受けようとする理由
4.当該猶予を受けようとする期間
5.分割納付で当該猶予を受けようとする場合にはその分割金額と当該金額ごとの猶予期間
6.猶予金額が50万円超の場合は担保(担保を提供することができない特別の事情があるときはその事情)


2.分納交渉と猶予申請とでは何が違うのか。

税金を払いきれない納税者の要求に対し、役所は職権による分納交渉で対処することが多いわけですが、分納は、徴収職員の裁量権の行使に過ぎません。
よって、分納の願い出自体を拒否することも可能となります。
また、職権による裁量権の行使なので、例えば、担当が変わって、新しい担当者が強権的で一括支払いを求めるとか、また、突然、分割金額の引き上げを求めるということもありうるわけです。
また、職権による分納交渉では、最低でも、いくらとか、何回払いとか、分割金額も分割期間も制約されますし、何より納付期限が遅れた場合につく延滞税・延滞金は残ります。
これに対し、納税猶予申請は権利の行使になりますので、役所には、申請を受理する義務が発生します。
逆に、申請主義なので、申請しないと、納税の猶予等の活用はできません。


3.許可された場合の効果について

申請に対し、要件を満たしているとして、納税の猶予が許可されると、以下のような効果を得ることができます。
1.仮に督促状が届いて、納税できなくても、新たな滞納処分(滞納者の意思に関わり無く税金の徴収を実現する行政処分。差し押さえです。)ができません。
2.差押え物件は申し出により一定の要件(差押により事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがある財産であること)で解除できます。
3.延滞税の半額免除、または全額免除が可能です。
4.担当者が代わって、突然、一括支払いを求められる等の心配がなく、安心して分納ができます。完納できなければ1年延長の申請ができます。


4.申請による換価の猶予について

平成28年4月から施行されたものですが、従来からの職権によるもの以外に、申請による換価の猶予という制度ができました(地方税法第15条の6)。申請による換価の猶予が認められた場合の取扱いは以下のとおりです。
1.すでに差押えを受けている財産の換価(売却)が猶予されます。
2.差押により事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがある財産については、差押えが猶予(又は差押えが解除)される場合があります。
3.申請による換価の猶予が認められた期間中の延滞金の一部が免除されます。


5.不服申立て

納税の猶予・徴収の猶予、換価の猶予の申請は、権利です。
よって、申請が「不許可」になったとき、その決定に納得ができなければ、国税通則法第75条等に基づき不服申し立てができます。


6.その他

最後に、社会保険料(例えば、健康保険料、国民年金保険料等)にもそれぞれ独自の保険料徴収の猶予制度があります。
収入減少や失業などで保険料を納付することが困難になった場合には、自治体に申請書を提出してください。
また、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、困窮者が多数いることから、政府が特例制度を創設する動きがあります。
この点の動きも注目していきたいところです。



弁護士榊原尚之が納税の猶予・徴収の猶予の活用について語りました。
動画の視聴の場合には、下線の部分のところをクリックしてご試聴ください。

納税の猶予・徴収の猶予の活用を


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